クロスバイクの変速段数は、多いほうが有利?

クロスバイクの変速段数は、ほとんどの場合「3×8段」になっている。
ある種のスタンダードと言っても過言ではない。

中には「2×8段」のクロスバイクも存在しているが、ギア数は多いほうがいいこと、有利なのだろうか?

変速数の意味

「3×8段」と「2×8段」では、当然前者のほうが変速数が多い。
3×8=24段変速だし、2×8=16段変速。
計算すると、8段分の違いになる。

クロスバイク定番中の定番、ジャイアント ESCAPE R3は3×8段変速。

(c)GIANT

同じくジャイアントのクロスターというクロスバイクは、2×8段になっている。

(c)GIANT

ギア数が多い、ESCAPE R3のほうがいいもの、高級、と思われがちだが、そういうわけでもない。

ギア比という考え方がある。
ギア比は、ペダル(クランク)が一回転する間に、後輪が何回転するかの指標。
つまり、一漕ぎする間にどれくらい進むのかを表している。

ギア比が大きいということは、一漕ぎで進む距離が長いし、重いギアになる。
3×8段のエスケープR3のギア比を見ていこう。

11 13 15 18 21 24 28 32
48 4.36 3.69 3.2 2.67 2.29 2 1.71 1.5
38 3.45 2.92 2.53 2.11 1.81 1.58 1.36 1.19
28 2.55 2.15 1.87 1.56 1.33 1.17 1 0.88

 

お分かりになるだろうか?
フロントが一番重い48Tのギアを使い、リアが一番軽いギアの32Tを使った場合、ギア比は1.5となる。
これとほぼ同じギア比になる組合せは、38-24T、28-18T。

たくさんギアがあるように見えて、実はギア比がほとんど変わらない組合せがたくさん出てくる。

自転車の変速は、前(フロント)と後ろ(リア)では意味が異なる。
前の変速機は、大きな変化を出したいときに使う。
登り坂があるので、急に・大きくギアを軽くしたいときなどには有効。

後ろの変速機は、ちょっとしたペダルの重さの変化を付けたい場合に使う。
もうちょっと加速したいな、スピードを少し落としたいなと思うときに後ろの変速を使う。

前の変速段数がたくさんあっても、被ってしまうギア比の組合せがたくさん出てくるので、実用上はそれほど使えないのだ。

2×8段のクロスターを見ていこう。

11 13 15 17 20 23 26 34
46 4.18 3.54 3.07 2.71 2.3 2 1.77 1.35
30 2.73 2.31 2 1.76 1.5 1.30 1.15 0.88

 

フロントが2速でも、ギア比が近くなる組合せは出てくる。
しかし、「3×8段」と「2×8段」の、最も重いギアと最も軽いギアだけを見てみよう。

エスケープR3(3×8) クロスター(2×8)
最も重いギア比 4.36 4.18
最も軽いギア比 0.88 0.88

どちらも最も重い・軽いだけで見るとほとんど変わらない。
フロントが3段でも2段でも被るギア比は出てくるのだから、実用上では使わないギアが出る。

この2台の比較で言うと、フロントが3枚あっても2枚あっても、実用上で使えるギアの枚数は実は大差が無いことになる。

リアの変速数が肝

自転車の変速数を表現する場合、3×8段であれば「8速」と表現することが多い。
決して24段変速とは言わない。
これはなぜかというと、被るギア比がたくさんあるので、実際に24段全てを使えるわけでもないからだ。

自転車の変速数で重視されるのは、リアに何枚のギアがあるか。
リアの変速段数が多いほど上位、いいもの、高級、という考えになる。
フロント変速は、2枚あれば十分と言える。
3枚だと変速のキレが悪くなることや、重量も重くなるなどデメリットが生じる。

現在、トップグレードの変速システムでは、リア変速数が12というものもある。
クロスバイクではシマノの安価なコンポーネントが採用されるため、リア8速が主流。

ロードバイクでは、リア変速数が10、11あたりが主流になる。

リアが多いと、それだけ細かいギアの変更が可能になる。
僅かに重くしたい、僅かに軽くしたいという要望をこなしてくれるのが、リアの変速。
そのため、上位のクロスバイクではリア変速数が多くなっており、リア10段というものも存在する。

見かけに騙されない

3×8と2×8では、前者のほうがいいもの、変速数が多いと思うだろう。
しかし実情は、被るギア比が多くなるだけなので、それほどメリットがあるとも限らない。

24段変速というのと、16段変速というのでは前者のほうが高級なものと誤解しがちだが、そういうわけではない。
たくさんあるということは、必ずしも便利でもないし、必ずしも高級というわけでもない。

安価なクロスバイクでは、「21段変速」と表記されているものもある。
21段変速の中身は、3×7。
実は2×8段よりも使い勝手が悪い。

自転車の変速数は、リアが何枚あるかで便利さが変わってくる。
3×7=21だが、実用上は2×8=16のほうがギア数が多くなる。
ギアの総数ではなく、リアに何枚あるかが鍵となることは知っておいたほうがいいだろう。

21段変速よりも、16段変速のほうが上位。
数字ではなく中身を見ることが大切になる。


関連記事

  1. 4月は39000件のアクセスがありました。

  2. 街の自転車屋が減っていった理由。

  3. 出張自転車の修理店を探すときは、車(バン)で来てくれるほうが効率的。

  4. ママチャリのバルブキャップは、必須の部品。

  5. パンク修理についてユーザーが望んでいること。

  6. クロモリフレームのアヘッドステムとスレッドステム。

  7. AU損保が「出張自転車修理」に対応。ロードサービス以外にもより便利に。

  8. 雨に濡れた自転車、錆を予防するには?

  9. 最強花粉症対策!花粉症サイクリストに最適なNaroo MASK F5s。

  10. 2022年4月は20.7万PVでした。

  11. TOPEAK AIRBOOSTER G2。CO2インフレーターでも空気圧を測定可能。

  12. 安易に軽量化達成!軽量アルミステムでお財布にも優しい。