近年、高齢ドライバーの事故が社会問題化し、免許返納を勧めることが増えています。
そのような時代ですが、免許を返納してしまえば買い物などの足がなくなってしまうので、自転車に移行するケースも増えています。
中には、免許返納後に自転車購入に対する補助金を出す自治体もあるのですが、大きな間違いを犯す可能性も。
目次
高齢者による自転車事故が増えている
こちらは2015年のデータになりますが、
高齢者(65 歳以上)の自転車事故では、対人・対物の事故だけではない転倒事故も突出して多く、年間の全転倒
事故が 1,320 件あるのに対し、そのうち 45%の 600 件が高齢者の転倒事故です。
自転車での転倒事故の約半数は、高齢者になっています。
加齢による運動機能の低下、平衡感覚の低下などがふらつきや転倒の原因になると考えられています。
自転車は二輪車ですので、バランス感覚がないと乗ることが出来ません。
人間誰しも、能力が低下していき衰えていくのは当たり前。
車の場合は4輪なので転倒する可能性はありませんが、高齢ドライバーの免許返納の動きが加速しているのは、判断力の低下や運動機能の低下などから適切な運転が出来なくなってくることが原因。
自転車も車両ですので、自転車であっても適切なブレーキングや状況判断など運転技術は必要になります。
さらに二輪車である特性から、車では必要とされない平衡感覚、バランス感覚も求められます。
自転車のハンドル操作ミスも、高齢者はほかの年代の2.5倍と著しく高いのも特徴。
自転車のハンドル操作ミスは、転倒のリスクが高まるので危険です。
こちらのニュースにもあるように、
https://www.asahi.com/articles/
高齢者が自転車に乗っているときに、バランスを崩して転倒してしまい頭部を打ってお亡くなりになってしまう事故が増えています。
若い頃は手放しでも自転車なんか乗れたよ!というおじいさんもいるでしょうけど、人間誰しも衰えていく。
運動機能や平衡感覚は、誰しも低下していくのが当たり前。
若いころ出来たことが今は出来ないというのは、恥ずかしいことではなくしょうがないことなのです。
電動アシスト自転車の普及
電動アシスト自転車は日本において販売台数を着実に増やして市民権を得たと言っていいでしょう。
こちらの資料によると、60代以上の電動アシスト自転車使用率は9.2%となっていますが、ほかの年代よりも圧倒的に高いのが特徴。
電動アシスト自転車は、発進時に強いアシスト力が掛かるため発進時にフラフラしづらいメリットがあります。
ただし、いわゆる「ケンケン乗り」を電動アシスト自転車でやってしまうと、むしろ危険。
強いアシスト力が掛かってしまい、バランスを崩して転倒するリスクが高まります。
電動アシスト自転車ではケンケン乗りは絶対にNG。
サドルに座って跨った状態からスタートしないといけません。
一般的なママチャリに比べ、電動アシスト自転車は総重量も重くなります。
おおよそですが、一般的なママチャリは重量が17キロ程度。
電動アシスト自転車は30キロ近い重さになるため、万が一歩行者とぶつかってしまうと重大事故につながる可能性もあります。
自転車が30キロあれば、人間も含めると100キロ近い重量になる。
100キロの鉄の塊が歩行者にぶつかれば、死亡事故のリスクも高くなります。
実際、時速9キロで走行していた電動アシスト自転車が衝突事故を起こし、ぶつかった歩行者がお亡くなりになる事故も起きています。
スマートフォンと飲み物を持ちながら電動アシスト自転車に乗り、歩行者にぶつかって死亡させたとして、重過失致死罪で在宅起訴された元大学生、森野実空被告(20)に、横浜地裁川崎支部(江見健一裁判長)は8月27日、禁錮2年、執行猶予4年(求刑禁錮2年)の判決を言い渡した。
判決は、被告が右手に飲み物、左手にスマホを持ち、左耳にイヤホンをした状態で、スマホをポケットにしまった直後に事故を起こしたと認定。江見裁判長は「歩行者を死傷させ得るとの自覚を欠いた運転は自己本位で過失は重大」と指摘した。時速約9キロと比較的低速で、被告が反省の弁を述べていることなどから執行猶予付き判決とした。
判決によると、昨年12月7日午後3時15分ごろ、川崎市麻生区の市道で、自転車を運転中にスマホの操作に気を取られ、前方不注意で歩行者の米沢晶子さん=当時(77)=に衝突し、2日後に死亡させた。
時速9キロというのは、自転車としてはむしろ遅い速度と言えますが、それでも重量が重い自転車なので衝突すると重大事故になる恐れが高くなります。
高齢者の場合、ふらつきによる転倒事故のリスクもある一方、判断力の低下などからブレーキが遅れて歩行者に当たってしまえば他人を傷つける恐れもある乗り物です。
三輪自転車は、ふらつき防止にはならない
高齢者の免許返納後に、電動アシスト自転車を買う、もしくはお子様からプレゼントされることは近年増えています。
自治体によっては補助金も出ることから、購入のハードルも下がっている。
そんな中、高齢者がふらついて転倒しないようにと、三輪の自転車(電動アシストを含む)を購入する事例もあるようです。
二輪よりも三輪のほうが転倒しづらいと思っていませんか?
実態は、むしろ三輪自転車は転倒しやすいものです。
ブリヂストンの三輪自転車の説明動画です。
三輪自転車にはスイング機構というバランスを取る装置が付いているものがあります。
二輪の自転車とは全く異なるバランス感覚が要求されますので、高齢者にはむしろバランスが取れなくて転倒する事例も出ています。
ブリヂストンの製品ホームページにも注意書きがあります。
ブリヂストンワゴンは、荷物を安定して運ぶ目的で設計されています。
操縦には特殊な技量が必要となります。ご高齢者の方やリハビリを想定した商品ではございません。
こちらでも紹介されているように、二輪の自転車とは全く違う技術が求められるのが三輪自転車。
若い人でのバランスを取るのに四苦八苦するのが三輪自転車ですので、安易に倒れにくいと勘違いするのは危険。
近年注目されている四輪自転車
近年、高齢者が転倒しづらく安全に乗れる自転車をということから、四輪自転車が注目されています。
動画でも出ているように、三輪や二輪と比べると圧倒的に安定性が高いのが特徴。
こちらがメーカーサイトになります。
https://kyoei-seisaku.co.jp/kenkyakun/
<注>
改正道路交通法により、2020年12月1日から4輪自転車も「普通自転車」の区分になるため、歩道走行可の標識がある歩道や、70歳以上の高齢者は4輪自転車で歩道走行しても違反ではなくなります。
ただし四輪自転車には重大な欠点もあります。
道路交通法上、この四輪自転車は歩道を走ることが出来ません。
車道以外は走れませんし、自転車道も走ることが出来ません。
道路交通法では、自転車は原則車道を走ることになっていますが、70歳以上であれば歩道走行も認められています。
四輪自転車の場合は、年齢に関係なく歩道を走ることが全く出来なくなりますし、横断歩道も押して歩くしかありません。
ヘルメット装着の義務はありませんが、原付と同じように走らないといけなくなります。
安定性が高く転倒リスクを大きく減らすことが出来ても、判断力が低下した高齢者には車道を走ってほしくないと思うご家族も多いのではないでしょうか。
ここが唯一の難点ですが、二輪車よりも不安定な三輪自転車を選ぶくらいなら、こちらの四輪自転車のほうが安心と言えます。
必ず試乗してから決める
高齢者の自転車選びですが、購入前に試乗してから決めるのが一番です。
三輪自転車はあまりお勧めしません。
普通の電動アシスト自転車でも、見た目は似たように見えて、乗ってみると感覚が全然違うケースはよくあります。
そういうのも、試乗しないと分からない感覚です。
実際にいくつかを乗り比べてもらって、
・本当に自転車に乗れそうか?
・どの自転車が自分に合っているのか?
きちんと確認しましょう。
そして高齢者は転倒事故リスクがほかの年代よりもはるかに高いので、ヘルメットは必須。
万が一事故を起こしてしまった場合には、近年は賠償金が高額になる傾向にあり、9000万以上になってしまうこともあるので、自転車保険も必須と言えます。
自転車保険、入ってますか? いくつかの都道府県・市町村では、自転車保険の加入が義務化されています。 ただし未加入でも罰則はありません。 義務だから自転車保険に加入したほうがいい!というのはナンセンスです。 自転車保険に加入すべき、たった一つの理由とは!? 自転車保険に加入すべき...
いかがでしたか?
三輪自転車は、転びにくそうと思いきや、実は逆。
きちんと試乗して、乗れそうかどうかを確認してから購入しましょう。